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初心者へ贈るいい事
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大きな成功を収めるのが周知の通りヘンリー=フォードによるモデルT型である。しかし、安い値段の大衆車を作ろうという試みはフォードが初めてではなかった。オールズ自動車会社が、1901年に当時では破格の500ドルという値段でカーブドダッシュ・オールズモービルを売り出し、5年間で1万8425台の生産を数えている。ただ、この自動車は馬力が弱く、軽くはあっても材質がもろく田舎の悪路走行には適さず、5年間で生産を終了してしまうが、初めて大衆市場向けに量産された記念すべき車である。しかし、このあと有名なフォードT型が出現するまで7年かかり、大衆車への移行が早いと言えども、しばらくは高級車全盛の時代が続いている。これは、高級車の方が利益率が高かったという営業政策上の問題もあるが、新しい技術はやはり高級車にまず優先されていったことがあげられる。この高級車の技術が大衆車にも導入されることが必要であるが、そのためには生産コストを削減することが一番の近道であり、大量生産技術が採用されることが必要不可欠だったのである。

ⅲ.製品の規格化・標準化

こういった背景の下で自動車の大量生産方式を完成させたのは、前述の通りヘンリー=フォードであるが、彼がこれを実現できた背景として、アメリカには互換性部品生産に始まる大量生産システムの工業的伝統が、19世紀を通じて形成されていたことが大きく寄与している。この互換性部品生産というのは、近代的な大量生産を志向する加工組立産業が共通して採用する生産システムで、それぞれの工業製品構成部品を規格化し標準化することで、同じ個所の部品であれば故障してもいつでも取り替えられる互換性を持たせるように作っていく生産方式のことを指す。この生産方式を採用すると、まず何よりも部品だけでなくそれで組み付けられる製品そのものも規格化され標準化されるから、製品の性能や品質にばらつきがなくなり、安定した製品を作ることができるようになる。この規格化や標準化の考えが大量生産方式にとって不可欠な要素なのである。もしそれがないと、部品はその仕様や規格がまちまちになるから、その一つ一つを手直しする必要があり、大変な手間と高度な熟練が必要になるし、規格化された部品のまとまった量での集中的な加工処理が可能となり、生産コストはずっと割安になる。アメリカでこのようなシステムがいち早く発展したのは、長い間構造的な労働力不足に悩まされた国で、特に熟練労働者の確保が難しかった。当然、熟練労働者に対する賃金は伝統的に高く、ヨーロッパの2倍程度だった。そのため、この賃金を削減するために、万能工ではなく専門化されて範囲の限定された単能工的熟練の要請に力を注いでいた。こうすることで、熟練労働力の絶対的不足を補って、しかも生産効率を高めることに成功した。このような作業の専門家と標準化、そして工作機械の専用機械化が進むことは、互換性部品の生産体制発展の基盤を作ることでも大きな影響を与える結果となった。こうした生産体制の進展のもとで当初は銃などの兵器を手始めに、19世紀後半にはミシン、懐中時計、タイプライター、農業収穫機、さらには自動車工業に大きな影響を与えた自転車工業などが急速に発展していく。これらの製品はいずれも互換性部品生産方式をとることで、その大量生産とコストダウンに成功し、そして品質と性能の安定を実現したのである。このような互換性部品生産方式の伝統を引き継ぎアメリカの自動車工業における大量生産方式が形成されていった。ただし、自動車それまであったどんな工業製品よりも遥かに複雑で高度な加工を必要としたため、その出現までには一定の経過期間が必要であった。その数年の間に工作機械の精密化、簡易化やマイクロメーターや限界ゲージなどの新しい精密測定器具も出現し、大量生産方式が歴史に現れる地盤が着々と進められた。これらの高度な工作機械と互換性部品生産方式とが結びつき、自動車とくに大衆車の大量生産が可能になるわけだが、そのためにはこれを生かせる実用的で安く大量生産が可能新しいタイプの自動車の出現を待たねばならなかった。そして、このような要請にぴったりとかなう自動車として登場するものこそが、やがて大量生産革命をおこす標準大衆車、フォードモデルT型なのである。このモデルT型の登場によって、アメリカは世界のモータリゼーションをリードするとともに、自動車のパイオニア、ヨーロッパに対して自動車産業のパイオニアとなることとなったのである。
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